家族対談

「大切なのは『ありがとう』と『ごめんなさい』が言える素直さ」(吉田)

「自分がなにかされたときに怒ってくれない父親は信用できない」(片倉)

●辞めたきゃ辞めればいいじゃん!?

吉田:対談のテーマはずばり「家族」。というのも、VIXは「家族みたいな組織にしたい」と代表の福田が立ち上げたんですよね。

片倉:なんてったって「一人でご飯を食べたくない」と言って代表の福田が会社をつくってしまった。

吉田:すごい会社ですよね……。実際に社内のSNSではご飯会の連絡が多い(笑)。

片倉:ぼくも月に20日はなにかしらの飲み会に顔を出してる。

吉田:片倉さんはもともとVIXの取引先にいましたよね?入社したきっかけは?

片倉:福田と中学のときクラスメートでした。大学も一緒。中学、高校と1回ずつ留年したので、入ったときはぼくは後輩だったけど……。

吉田:なぜ留年を?

中学のときは事故、高校のときは麻雀のやりすぎで(笑)。それで、大学に入ると、福田と同じサークルで、就職で失敗してアルバイトをしたらその会社に福田が社員でいて、ぼくもそこに入社したら退社していた福田が取引先にいた。

吉田:すごい縁……。

片倉:前の会社を辞めることが決まって、福田から「じゃあおいでよ」と誘われました。前の会社では毎日終電まで働いていたので、飲み会や社員旅行もほとんどなかったから、VIXは楽しそうだなと、ずっとうらやましかったんだよね。

吉田:私は1年早く入っていて、あ、取引先の人が来た! と思ったのを覚えています。

片倉:仁美は、求人のキャッチコピーに惹かれて入ってきたんだっけ?

吉田:そうです。「辞めたきゃ辞めればいいじゃん」というキャッチコピーに惹かれて(笑)。前職では百貨店で受付兼エレベーターガールをやっていたのですが、退職して繋ぎのアルバイトを探していて、直ぐ辞めるつもりだったので、ちょうど良いキャッチコピー!と思ってアルバイトとして入社したのがきっかけです。

片倉:あのコピー、福田たちが酔っぱらって決めたらしいよ。

吉田:それはヒドイ(笑)。とはいえ、実際に、「辞める」と言ってしまった時期もありましたけどね。

片倉:あったねぇ……。でも、結局戻ってきたよね。

吉田:いざ、次の仕事を探そうと思ったとき、「自分ってなにがやりたいんだろう」と考えざるを得なくなって。これまで嫌なことから逃げてばっかりで、頑張ったことがないと気がついたんです。だから、「なにをやるか」の答えが出るまで、仕事をやり続けようと・・・。で、「ごめんなさい。もう一回働かせてください」とお願いしました。一度辞めると言ったのに、受け入れてもらえて感謝です。本当にあの時、逃げなくて良かったと思ってます。

●上司が「白」と言っても、「黒」のときは「黒」と言っていい

片倉:仁美も2人のお子さんがいて、ぼくも息子が3人いるけど、子育てをしていると、社員教育と一緒だと思わない?

吉田:ああ、よくわかります。

片倉:こないだ息子と野球を観にいったんだけど、隣に座っていた男性がぼくの子どもの足を椅子で挟んだんだよ。だから、その男性にぼくは怒りの抗議をした。最終的には医務室に行き、大丈夫なことがわかったので、引っ込むことにしたんだけど。その話を部下にしたら「じゃあ、はじめから怒らなきゃいいじゃん」と言うんです。でも、最終的に抗議をひっこめるとしても、自分がなにかされたときに怒ってくれない父親って信用できないよね。

吉田:さすが、武闘派!

片倉:これは、部下と上司に置き換えても一緒。部下がしたミスなのかわからないけれど取引先に文句を言われたとき、上司として抵抗する姿を見せることは重要だと思う。最終的には会社として引くことがあっても。最初から「お前が悪いことにしておけ」と言われたらどう思う? と部下に聞くと、納得した顔をしていたね。

吉田:そもそも上司の発言に反論できるのがVIXらしい(笑)。

片倉:他の会社の人と話すと、「上司が『白』と言ったら、黒と思っても部下は『白』と言う」のが普通の会社ってもんらしいね。VIXの場合は、上司が「白」と言っても、黒だったら「黒ですよ」ってすぐ反論してくるから(笑)。

吉田:VIXの基準は明確で、「ずるいことをしない」「『ありがとう』と『ごめんなさい』が言える」というもの。子どもに言っていることとほぼ同じ。その意味でも子育てと似ているのかも。これさえできていたら、上司が「白」って言っても「黒」と言っても叱られませんよね。上司だって間違えることはありますし、そのときに上司が「ごめんなさい」と「ありがとう」が言えるのかも問われています。

●家族以上に本音でコミュニケーション

吉田:今どきこれだけ「家族」を前面に押し出す会社って珍しいのかもしれません。

片倉:対談のテーマを否定するようで申し訳ないんですけど、VIXの言う「家族」って一種のタテマエだとぼくは思うんですよ。

吉田:ええ、どういうことですか?

片倉:だって、仲の悪い家族は沢山いるでしょ。奥さんと上手くいかなかったり、子どもが反抗期だったり。ましてや、会社は他人の集まりですから、家族以上に本音でしゃべらないと伝えたいことも伝わらない。だから、VIXの言う「家族」の本質は「本音でコミュニケーションしよう」ってところにあるんじゃないかな。

吉田:なるほど。確かに、社員には本当の家族には話せないことも言いますね。私も同僚の好きなアーティストや恋人の話なども相談に乗りますしね。それが家族の様な組織だから? と言われると、もしかしたら、家族だったら照れくさくて言えないことも話せたりするから、ある意味家族以上にメンバーとは密かも。

片倉:本音で話すことは、仕事の上で大切。「なんで営業成績が上がらないんだろう」って思ったときに、直接上司に聞けばいい。そうしたら、「じゃあ、こういう方法を取ってみようか」と上司も提案できる。そのときに「俺はだめなんだ」「環境が悪いんだ」と自分の中でため込んでしまうと、不満を言うときには辞める一歩手前だったりして、取り返しがつかなくなってしまう。

吉田:どかーんと爆発する前に、話してもらうことは大切ですよね。

片倉:なんでわざわざご飯を食べにいくの? と思うかもしれませんが、プライベートな時間を共有するからこそ、お互いなんでも言い合える関係性ができてくるんだよね。

吉田:摩擦も減りますよね。もし、子どもの体調不良で急に休まなければならなくなった時、「子どもの事情で休む」とだけ言われたら、部下は「子どもが産まれたからって……」と不満をもつと思うんです。でも日ごろから「子どもがこの時期風邪をひきやすくてね」とか「毎日こういうスケジュールで過ごしていて」という点をしっかりと共有する。

片倉:それがあるかないかで、仕事のスムーズさが変わってくるね。

●人のために仕事がある

片倉:いやぁ、本当に仁美はよくやっているなと思うよ。

吉田:なんですか、急に(笑)。

片倉:役員もしながら、2人の子どもを育てるワーキングマザーでしょ。ぼくは一週間だけ在宅ワークをしながら息子を1人でみたことがあるんだけど、すごい大変。学校に送り出して、打ち合わせに行く。そうしたら、はじまった5分後に「お父さん、熱が出たので向かいに来てください」と電話がかかってくる……。

吉田:よくある。よくある。

片倉:それで、仁美はいつもこんなことをやっているんだなって。若い社員に「仁美みたいになりたいけどどうしたらいい」と聞かれたらなんて答えるの?

吉田:「一回は折れるよ」って言います(笑)

片倉:厳しいね。

吉田:少なからず今まで出来ていた当り前のことが、子供が出来た瞬間から当り前にできなくなる。そのもどかしさに「前までならこう出来たのに・・・」と悔しい思いをすることもあって。とはいえ、仕事と育児の両立ってやっぱり大変そう・・・と思うことはなく、その分、育児と仕事を両立しているからこそ見えてくる事、スキルアップする事もある。そして、不思議なことに、育児をする事で仕事のストレスが解消されている自分もいて(笑)体力的には大変と言えば大変だけど、私にとっては個としていられる仕事という場所は必要不可欠かな。

片倉:仁美は今後の目標やVIXでやりたいことはある?

吉田:メンバーが VIXの箱をつかって、やりたいことを見つけて、それを実現できるよう様に手助けをしていきたい。また、女性として生まれて、結婚、出産というライフイベントも経験し、女性だけの問題だけではないですが、ベンチャー企業で仕事と育児との両立についてはまだまだ課題点が多い。まずはVIXの女性陣だけは「その両立したくてもできない・・・」という点が無い様に、自分自身の経験も通して環境を作っていきたいと考えてます。片倉さんは?

片倉: ぼくは社員の数を増やして、事業を大きくしたい。これくらいの規模の会社は上がつまってしまい、若手にポジションが回ってこなくなりがち。せっかくベンチャー企業に入ったのに、若手もそれじゃあつまらない。ぼくも、先がないからつまらない。

吉田:いいですね。上司が目標をもっていない会社なんて退屈ですもんね。

片倉:「自分は○年後こうなりたい」と目標をもっていったり、これからもちたいと思う人に、うちの会社は向いているのかも。それがはじめは拙い夢だったとしても、上司のぼくたちは無下にせずちゃんと受け止めて一緒に考えていきたいね。

吉田:そうですね。VIXは色々な事業をやっている企業ですが、必要なのはスキルよりも、「ありがとう」と「ごめんなさい」が言える素直さだったりする。事業内容はベンチャーなので変わっていきます。仕事のために人があるのではなく、人のために仕事がある。

片倉:うちに興味がある時点で、ちょっと変わっている人であることは間違いない(笑)。ぜひ、ぼくたちと、本音で話し合える「家族」になりましょう。

続きを読む

家族構成に戻る

家族構成に戻る